エンタープライズソフトウェア企業のCitrix Systemsは、新たなCEOを探している。同社は今週、Citrixで18年の経験を持ち、2017年からトップを務めていたDavid Henshall氏が退任し、取締役会議長のBob Calderoni氏が暫定的に後任となったと発表した。
Henshall氏の退任理由は明らかにされていない。声明で、Calderoni氏は前社長兼CEOのHenshall氏が、同社のクラウドおよびサービスとしてのソフトウェア(SaaS)モデルへの移行を支援する上で重要な役割を果たしたと述べ、Citrixのサービスの加入者は1,100万人を超えていると指摘した。
同氏は、「Davidは、同社と従業員がパンデミックを乗り越え、世界中のさまざまな業界の顧客が事業運営を最小限の混乱で継続できるようCitrixを成功裏に位置付ける上でも、重要な役割を果たした」と述べた。
一方、Henshall氏はCitrixを率いることを誇りに思っており、同社はCalderoni氏の下で安泰だと述べた。
経営陣レベルの組織再編は、2015年にCitrix株式の7.1%を取得して以来、同社で注目を集めてきたアクティビスト投資家のElliott Managementが、Citrixの10億ドルを超える株式を取得したと報じられてから1カ月後に行われた。
Elliottが再登場
ElliottがCitrixの周辺に再び姿を現したことがHenshall氏の退任と関係していたかどうかは不明だが、これは同ヘッジファンドが6年前に同社の大規模な株式を取得した後に起きたことを思い起こさせる。今回は、ElliottはCitrixに対し、約12.8億ドル相当となる10%超の株式を保有するに至ったと伝えたという。また、Elliottは同社と協力してテクノロジー企業としての企業価値を高めたいと考えているとも報じられている。
Elliottは、IT分野を含む企業の大規模な株式を買い付け、株主に利益をもたらすことを目的とした変革を要求してきた実績がある。Elliottが2015年にCitrix株を取得した後、同ヘッジファンドは米国の株主アクティビズム部門責任者であるJesse Cohn氏を同社の取締役会に送り込んだ。その後まもなく、Mark Templeton氏が10年以上務めたCEOを退任し、同社はGoToMeetingおよび関連製品をスピンオフした。これらは2016年にLogMeInに吸収された。
2017年当時CFO兼COOだったHenshall氏は、Templeton氏の後任だったKirill Tatarinov氏が2年で退任した後、CEOに就任した。Elliottは2019年にCitrixにおける役割から手を引き、Cohn氏は昨年、取締役会を退任した。
関連記事:2021年版・クラウドネットワーキングサービス/ソリューションのベスト
SaaSへの移行
Citrixには、Elliott以外にも課題がある。同社はデスクトップ・アズ・ア・サービス(DaaS)などのサービス拡大に積極的に取り組んできたが、パブリッククラウドプロバイダーとの競争が激化している。同時に、多くの既存ITベンダーと同様、Citrixは製品を販売する企業からサービスを販売する企業への移行を進めている。これは、継続収益モデルへの転換を意味する。
TECHnalysis Researchの主席アナリスト、Bob O’Donnell氏によると、こうした移行は必ずしも容易ではない。
「移行は難しい。特に、従来からソフトウェアを販売してきた企業にとっては大きな変化であり、当初はキャッシュフローや収益性などに大きな打撃を与える」とO’Donnell氏はEnterprise Networking Planetに語った。「時間がたてばうまくいき、最終的には企業はその道を切り開いていく。これを実行した企業の多くは成功しており、明らかに正しい選択だったと証明された。ただ、Citrixにとっては想定より少し時間がかかっているのだと思う」
第2四半期の決算
第2四半期の結果について7月に発表した株主宛書簡で、Henshall氏は、SaaS企業にとって重要な指標であるCitrixの年間経常収益(ARR)が10億ドルを超え、74%増加したと指摘した。また、Citrix Cloudの有料加入者数は52%増の1,140万人となり、成長率は前年から加速したと述べた。前年の加入者数の増加率は34%だった。
サブスクリプション予約に占めるSaaSの割合は63%だった。
同氏は、「今後、当社が事業において実施している業務面および組織面の変革により、分散型チームという構造的なトレンドと、統一されたワークエクスペリエンスを安全に提供する重要性の高まりを、さらに活用できるようになると考えている。時間の経過とともに、顧客をSaaSへ移行することで、報告する業績の予測可能性が高まり、成長も加速すると考えている」と記した。
CitrixはHenshall氏の退任を発表する際、第3四半期の売上高が7億6,500万ドルから7億7,500万ドルという業績見通しの上限に達する見込みだとも述べた。同社は11月4日に四半期決算を発表する。
変革の明確な理由は不明
TECHnalysisのO’Donnell氏は、今回のリーダー交代の理由を特定するのは難しいと述べた。第2四半期の数字は悪くなく、今後の売上高も予想範囲内にある。ただし、CitrixのSaaS計画を加速させるよう、社内外からの圧力が影響した可能性はある。
「こうした圧力の一部が今回の結果につながった可能性はある」と同氏は述べた。「より積極的に前進するには新たなリーダーシップが必要な時期だという認識があり、そのために交代を選んだ可能性もある」
同アナリストによると、Citrixはサービス主導型企業への移行を受け入れるのが他のベンダーより遅かった可能性がある。しかし、多くの組織にとって同社はエンタープライズアプリケーションアーキテクチャの基盤であり、一部の顧客はクラウドへの移行に慎重だった可能性がある。
「顧客企業の多くは非常に伝統的な企業で、従来の形を気に入っており、テクノロジーも非常に独自性の高いものだった」とO’Donnell氏は述べた。「運用にはCitrixの専門家が必要だったが、多くの組織にはそうした人材がいた。[Citrix]にとって、より多くの人材をクラウドに移行させることは少し難題だった。同社は前回の決算説明で、その人数が増えていると述べていた。これは、他のエンタープライズ向け、あるいは中小企業向けソフトウェア企業が直面し、対応してきた問題と、認識上は似た軌跡をたどっている」
変革の時
しかしO’Donnell氏は、今回の変化はおそらく、社内外の人々がCitrixのサービスへの移行は十分な速さで進んでおらず、組織を難局から脱出させるには新たなリーダーシップが必要だと感じたために行われたと述べた。
「移行においては誰もが壁にぶつかる」とO’Donnell氏は述べた。「Citrixに特有のことではない。Citrixに特有なのは、実行に移すのが少し遅かったことだ。移行のペースもやや遅く、従来型の顧客が多く、その顧客はあらゆる業務をオンプレミスで行っている。だからこそCitrixは顧客にとって非常に重要だった。すべてがオンプレミスだったからだ。この組み合わせを考えれば、一部の顧客が新しい働き方への移行に時間をかけている理由が分かる」
とはいえ、Citrixは製品開発の面では好調だった。Workspace Microappsや仮想デスクトップでの取り組みから、モバイル分野、MacOSやWindowsへの対応まで、成果を上げていた。
“「同社のテクノロジーの多くは、実際かなり優れている」と同アナリストは述べた。