コンピューティングやストレージに関する幅広いサービスをすでに組織向けに提供しているAmazon Web Servicesが、今度はネットワークに注力し始めている。
AWSのCEOであるAdam Selipsky氏は、今週開催されたAWSのre:Inventカンファレンスでの基調講演において、AWS Private 5Gのプレビュー版を発表した。これは、企業が自社のプライベートネットワークをより簡単に導入、拡張、管理できるようにし、数カ月ではなく数日で構築できるフルマネージドサービスだ。
このサービスにより、組織は「長い計画サイクル、複雑な統合、高額な初期費用という苦労なしに、モバイルテクノロジーの優れた点をすべて利用できる。……電源を入れると、プライベート5Gネットワークは自動的に構成され、企業のオフィスから大規模なキャンパス、工場の現場、倉庫まで、あらゆる場所にまたがるモバイルネットワークを簡単に構築できる」。
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WANをクラウドへ
その2日後、イベント会場でAWS幹部はAWS Cloud WANのプレビュー版を発表した。このサービスを利用すれば、企業はクラウドプロバイダーのテクノロジーを活用してグローバルなプライベートWANを構築・一元管理し、オンプレミスのデータセンター、支社、クラウド環境を相互接続できる。

AWS幹部は、ブログ記事で「ここ数年、顧客によるAWSネットワークの利用方法に変化が見られる。これまで以上に、顧客はインフラストラクチャの複雑さを軽減してアプリケーションやその他のビジネス上の優先事項に集中しようとしており、ネットワークはグローバルな範囲に広がり、その実現のために複数のテクノロジーを組み合わせている」と記した。
ただし、こうした要件をすべて管理するには複雑さが伴い、ユーザーの作業を遅らせる可能性があると、AWS幹部は記している。AWS Cloud WANはAWSが管理するグローバルネットワークを組織に提供し、VPNやソフトウェア定義WAN(SD-WAN)、専用線などの接続オプションを利用できるようにする。
AWS、ネットワーキングに本格参入
ZK Researchの主席アナリストであるZeus Kerravala氏はEnterprise Networking Planetの取材に対し、AWSがネットワーク分野に進出することは、同社にとってもテクノロジー業界にとっても重要な動きだと語った。
「これは、ネットワークがいかに重要になったかを業界に示すものだ」とKerravala氏は述べた。「AWSにとって興味深い点の1つは、同社がフルスタックのITプロバイダーになったことで、基盤となるコンピューティングプラットフォームからアプリケーション開発ツール、アプリケーションに組み込まれるAI[人工知能]ツール、そしてネットワークやストレージまで、すべてを提供できるようになったことだ。今や、AWS ConsoleだけでIT環境全体を管理することも考えられる」
オンプレミスのデータセンターからクラウド、さらにエッジまで広がり、リモートワークへの急速な移行によって一層分散化が進む今日のIT環境では、ネットワークがすべてを結び付け、データやアプリケーションがその上で稼働する中核テクノロジーとなっている。
AWSのバックボーンを活用
Cloud WANはAWS内の接続を支援するよう設計されており、企業は一元的に定義したポリシーと自動化を活用してネットワークセグメントを作成し、グローバルWAN全体に展開できる。AWS幹部によると、このサービスは複数リージョンに仮想プライベートクラウド(VCP)を構築し、SD-WANをAWSに拡張する組織や、既存ネットワークの一部をAWSのネットワークバックボーンで置き換えたり補完したりしたい組織を支援する。
このサービスには、支社、データセンター、Amazon VCPへの接続を追加するための中央ダッシュボードが含まれる。また、中央ポリシーにより、企業はネットワーク管理やセキュリティ業務を一元的に構成・自動化できる。
ネットワークベンダー各社、統合をアピール
Cisco Systemsは、WAN Cloudと自社のSD-WAN製品を統合し、ViptelaとMerakiの事業の製品も含めている。VMwareも自社のSD-WANテクノロジーで同様の取り組みを進めている。
VMwareのシニアプロダクトラインマネージャーであるVivek Archar氏と、シニアプロダクトマーケティングマネージャーのJay Thontakudi氏は、ブログ記事で「このソリューションはVMware SD-WANサービスによってローカルプレゼンスを確保し、AWSバックボーン上でAWS Cloud WANと統合することでグローバルリーチを実現する。このソリューションにより、企業のIT部門は、クラウドへの容易な接続と豊かなユーザー体験を備えた大規模なサイト展開をシンプルに運用できる」と記した。
統合を発表したその他のベンダーには、Aviatrix、Fortinet、Prosimo、そしてHewlett Packard EnterpriseのAruba Networks事業があり、同社はSD-WANとLANの製品を統合している。
Aruba幹部は、ブログ記事で「この統合ソリューションはネットワーク導入を自動化し、各支社をAWSのローカルなプレゼンスポイント(PoP)に接続する際に必要となる、手作業による時間のかかる段階的な構成設定や接続の複雑さを解消する。企業顧客はArubaのソリューションを使って、支社をAWSクラウドに接続するプロセスを数分で自動化できる。これには、特定のユースケースをサポートするために顧客のVPC内へ展開する必要があるAruba EdgeConnectインスタンスのワンクリック自動化も含まれる」と記した。
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通信事業者は注視すべき
ZKのKerravala氏は、通信事業者はAWSがCloud WANで提供するものに注目する必要があると述べた。このサービスには、幅広い企業にとって魅力的な機能が数多くある。その1つが、コンピューティングやストレージサービスで提供されているものと同様の従量課金モデルだ。組織は消費した帯域幅分だけ、複数のノードを接続する場合は使用したスループット分だけ料金を支払えばよい。
「従来の通信サービスについて考えてみれば、従量課金とは程遠い」と同氏は述べた。「定額料金を請求され、使い過ぎれば追加料金を支払わなければならない。しかし、使用量が少なくても料金は安くならない。……興味深いモデルであり、通信サービスのあるべき姿を再定義する方法だ」
同氏によると、当初、企業はAWSのサービスを従来の通信事業者への代替接続として利用する可能性が高く、通信事業者はこの点に注意すべきだという。
「AWSはネットワーク分野に参入した今、ネットワーキングにイノベーションをもたらそうとしている。率直に言って、通信事業者は革新的な能力で知られているわけではない」とKerravala氏は語った。「動きがかなり遅い傾向にあるため、業界にとっては良いことだ。Amazonが[ネットワークに]参入した今、利用率を高め、イノベーションを促進するだろう。これに対応して革新にも取り組む通信事業者は大きな成功を収める。一方、そうしない企業は取り残される」
Private 5GとCloud WANのサービスは、AWSがネットワーキング分野へ積極的に進出していることを示している。クラウドプロバイダーはすでにネットワークサービスを提供しているが、「それをグローバルWANとして本格的に利用しようとすれば、独自のSD-WAN接続と組み合わせて構築する必要があった」と同氏は述べた。「今回のサービスによって、それが容易になり、単一画面であるAWS Consoleから管理できる」
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AWS、AzureとGoogleに対する優位性をさらに強化
これは、Microsoft AzureやGoogle Cloudなどの競合も存在する急成長中のパブリッククラウド市場において、AWSをさらに差別化する要素でもある。Kerravala氏によると、圧倒的なリードに支えられたこの市場で、イノベーションの多くを主導しているのはAWSだ。
市場調査会社Synergy Research Groupによると、第3四半期の世界におけるクラウドインフラサービスへの支出は、前年同期比で37%増加し、450億ドルを超えた。AWS、Azure、Google Cloudがその支出の半分以上を占め、AWSの市場シェアは33%だった。Azureは20%、Google Cloudは10%で続いた。
AWS Cloud WANは、米国、欧州、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの10リージョンでパブリックプレビューとして利用できる。
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