調査会社IDCは、2025年までに世界のデータ蓄積量が175ゼタバイトを超えると予測している。データの大半は非構造化データ形式に閉じ込められる。画像やメール、PDFなどがその例だ。
もし、メールやレポートからスキャンした文書や画像まで、社内ネットワーク上にある非構造化データをすべて取り出し、簡単に分析・処理できる構造化データに変換できるとしたら、どうだろう。これがインテリジェント・ドキュメント・プロセシング(IDP)の力だ。IDPを使って非構造化データをさらなる分析や処理に適した構造化データへ変換すれば、企業は競争優位性を獲得できる。
明らかに、IDPは公共部門と民間部門の双方で数多くの用途を持つ、急速に成長している分野だ。
インテリジェント・ドキュメント・プロセシングを理解する
IDPは人工知能(AI)と機械学習(ML)を使い、反復作業の実行や複雑な文書からのデータ抽出に必要な手作業の量(およびそれに伴うヒューマンエラーの要因)を減らす。
インテリジェント・ドキュメント・プロセシング(IDP)では、AIとMLのアルゴリズムがますます利用されている。IDPでは、コンピュータービジョン、自然言語処理などの技術を使い、画像やPDF、スキャンデータなどのデジタル文書からデータを自動的に抽出する。
抽出したデータは、文書分類、契約分析、自動請求書発行など、さまざまな目的に利用できる。MLアルゴリズムは大量のデータから学習できるため、IDPのタスクに適している。例えば、ラベル付き文書のデータセットでMLアルゴリズムを訓練し、新しい文書の分類方法を学習させることができる。
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IDPと光学式文字認識(OCR)の違い
IDPは光学式文字認識(OCR)とどう違うのだろうか。最も簡単に言えば、IDPはOCRを拡張したものと考えられる。OCRはデジタル画像からテキストを抽出することに焦点を当てるのに対し、IDPにはテキストの意味を解釈し理解する機能も含まれる。
したがって、IDPを使えば文書からデータを抽出し、そのデータに基づいて処理や意思決定を行える。例えば、IDPは内容に基づいて文書を自動分類したり、契約書から特定の情報を抽出してデータベースに入力したりできる。そのためIDPは、人工知能を使って複数の文書形式からデータを識別・抽出する、より高度なテクノロジーだ。
さらに、IDPソリューションを使えば、非構造化データと半構造化データの両方を、構造化された利用可能な情報に変換できる。これにより、文書に閉じ込められた非構造化データや半構造化データに大きく依存する業務プロセスに、エンドツーエンドの自動化を組み込める。企業レベルで複雑な文書ベースのワークフローを自動化できることは、大きなメリットだ。
実際、IDPツールがなければ、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)プロセスでは、文書を読み取ってデータを抽出し、処理を完了させる人間が介在する必要がある。したがって、IDPはRPAの真の可能性を引き出す鍵でもある。
インテリジェント・ドキュメント・プロセシングで扱うデータの種類
IDPで扱うデータには、主に3つの種類がある。
- 視覚データ:画像やグラフィックによって伝達されるデータで、グラフ、図、写真などが含まれる。IDPはコンピュータービジョン技術を使ってデータを理解する。
- テキストデータ:文字によって伝達されるデータで、メール、記事、書籍などが含まれる。文字、文、段落など、言語上意味のある単位に整理される。IDPは自然言語処理技術を使ってこのデータを処理する。
- 数値データ:数値によって伝達されるデータで、財務データ、ソーシャルメディアデータ、センサーデータなどが含まれる。通常は表やスプレッドシートに整理される。IDPは、パターン認識や統計分析など、さまざまな技術を使ってこのデータを理解できる。
IDPのメリット
IDPの利用には、次のような多くのメリットがある。
精度の向上
IDPは、文書処理の精度を維持するうえで不可欠だ。IDPを使えば、従業員がある文書から別の文書へ情報を手作業で転記する際に起こりがちなデータ入力ミスを防ぐ対策を講じられる。
人間が正確にデータを入力することに頼る代わりに、IDPは人工知能と機械学習を使って文書から情報を自動抽出する。これにより、エラーの可能性を減らし、手作業によるデータ入力の必要性を抑えて時間とコストを節約できる。さらに、IDPを使ってシステムにすでに入力されたデータの正確性を検証し、先に進む前にすべてが正しいことを確認することもできる。
コストの削減
文書処理のコストは高くなりがちで、特に毎日大量の文書を扱う企業ではその傾向が強い。文書ベースのワークフローを自動化すれば、データ入力、仕分け、ファイリングなどの手作業に費やす時間とコストを削減できる。さらにIDPは、文書を期限内に処理することで、延滞料金などのペナルティを回避するのにも役立つ。
プロセス効率
IDPの最も大きなメリットの1つは、業務プロセスの効率を高められることだ。文書ベースのタスクを自動化することで、従業員はより付加価値の高い業務に集中できる。さらにIDPは、プロセスを適時かつ正確に完了できるよう支援し、やり直しの必要性を減らす。
顧客サービスの向上
IDPは、効率を高めるだけでなく、顧客サービスの向上にも役立つ。企業は顧客に、より迅速な処理と高い精度を提供できる。またIDPは、顧客とのやり取りを追跡し、すべての問い合わせに迅速に対応できるよう支援する。
コンプライアンス
多くの業界では、企業と顧客を守るためにコンプライアンスが不可欠だ。組織は、常に最新の規制に準拠していることを確認できる。さらにIDPは、コンプライアンス関連のやり取りを監視し、必要なすべての文書を期限内に提出できるようにするためにも利用できる。
ストレートスルー処理(STP)の向上
IDPの最終的な目標の1つは、ストレートスルー処理(STP)の高い達成率だ。ナレッジワーカーによる手作業の介入なしに、文書が自動処理される。STPの達成率を高めることで、企業はコストを削減しながら、効率、精度、コンプライアンスを向上させられる。
こちらも参照:従業員体験の向上が競争優位性を高める仕組み
インテリジェント・ドキュメント・プロセシングのユースケース
IDPは、複数の方法で業務プロセスを効率化する。日常的なユースケースには次のようなものがある。
買掛金
IDPは、請求書などの文書からデータを抽出することで、買掛金処理を自動化できる。抽出したデータは、支払いの生成や勘定照合に利用できる。
売掛金
IDPは、売掛金処理の効率化にも利用できる。顧客の請求書などからデータを抽出し、請求と回収のプロセスを自動化できる。
AML(マネーロンダリング対策)の自動化
インテリジェント・ドキュメント・プロセシングのもう1つの一般的なユースケースが、マネーロンダリング対策だ。米国の銀行は、銀行秘密法および関連規制を遵守しなければならない。銀行などの金融機関はIDPを使い、不審な活動の特定と報告のプロセスを自動化している。
保険金請求処理
保険会社は、請求処理ワークフローの効率化にIDPを利用することが多い。警察の報告書、診療記録、保険請求書などの文書からデータを抽出し、請求の査定プロセスを自動化する。
契約管理
企業はIDPを使って契約ポートフォリオを管理できる。契約書などからデータを抽出し、重要な日付の追跡、コンプライアンスの監視、レポートの生成を行う。
顧客オンボーディング
多くの企業は、自動化して顧客オンボーディングプロセスを効率化するためにIDPを利用している。顧客の申込書などからデータを抽出し、新規口座の開設やサービスの開始を行う。
従業員オンボーディング
顧客オンボーディングと同様に、人事部門はIDPを使って従業員オンボーディングプロセスを自動化する。雇用申込書などからデータを抽出し、身元調査の開始、従業員ファイルの作成、採用通知書の生成を行う。
融資処理
銀行などの融資機関は、融資処理ワークフローの効率化にIDPを利用する。融資申込書などからデータを抽出することで、意思決定プロセスを自動化できる。
住宅ローン審査
住宅ローン審査もIDPの一般的なユースケースの1つで、住宅ローン申込書などからデータを抽出し、リスクを評価して融資判断を行う。
受注処理
企業はIDPを使って受注処理ワークフローを効率化する。顧客の注文書などからデータを抽出し、ピッキングリスト、請求書、配送ラベルを作成する。
保険契約管理
保険会社はIDPを使って保険契約管理プロセスを自動化する。保険申込書などからデータを抽出し、保険証券を作成して補償を確定できる。
サプライチェーン管理
企業は、サプライチェーン管理プロセスを自動化する。発注書などからデータを抽出することで、在庫の追跡、サプライヤーとの関係管理、レポートの生成が可能になる。
IDPの導入
適切に機能する企業は、情報が効率的に流れる仕組みに支えられている。データ分析から文書のアーカイブまで、適切な情報を適切な人に適切なタイミングで届けることが成功に不可欠だ。
IDPは、さまざまな業務プロセスの自動化と効率化を支援し、時間とコストを節約できる。また、正確で最新の情報を提供することで、より良い意思決定にも役立つ。ネットワーク上の非構造化データを活用したいなら、IDPは最適な出発点だ。