5Gは、前世代の4Gと比べて高速通信、低遅延、同時により多くのデバイスを接続できる機能を実現する次世代の無線ネットワークだ。これらの改善は単なる小幅な進歩ではなく、無線技術における大きな飛躍を意味している。
そのため、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)が世界のテクノロジー環境を変え続けるなか、5Gはデジタル技術の進化における重要な要素となる見込みだ。
この新時代の幕開けを迎える今、5Gがもたらす可能性を祝うだけでなく、その導入に伴う課題や欠点を批判的に検証することも重要だ。
以下では、十分な情報に基づいて移行を判断できるよう、これらの問題について詳しく見ていく。
5Gネットワークの8つの問題点
5Gには、通信規制当局、業界関係者、消費者が詳しく議論すべき問題点やデメリットがいくつかある。ネットワークセキュリティ、インフラ整備のコスト、エコシステムの普及状況、健康への潜在的影響、デジタル格差を悪化させるリスクなどがその例だ。
ネットワークセキュリティ
5Gネットワークも前世代と同様、セキュリティ脅威と無縁ではない。ただし、接続されるデバイスの膨大な数と、そこで扱われるデータの機密性の高さにより、リスクは増幅される。サイバーセキュリティ上の懸念には、データのプライバシーや保護から重要インフラへの潜在的な脅威まで、さまざまなものがある。
さらに、データ処理の多くがエッジで行われる5Gネットワークの分散型の性質により、新たな脆弱性の入り口も生まれる。通信事業者やデバイスメーカーは、こうした脅威から守るため、強固なセキュリティ対策に多額の投資を行う必要がある。
インフラ整備のコスト
4Gから5Gへの移行は単純なアップグレードではなく、既存インフラの全面的な刷新を必要とする。新しいアンテナや基地局の設置に加え、これらの拠点への高速光ファイバー接続の敷設も必要だ。
このインフラ整備には多大なコストがかかり、5G展開の大きな障壁となる可能性がある。特に、投資収益率が低くなりやすい農村部や遠隔地ではその傾向が強い。
エコシステムの普及状況
5Gの潜在能力を十分に引き出すには、5G対応デバイスとアプリケーションによる完全なエコシステムが整っていなければならない。スマートフォンだけでなく、IoTデバイス、産業機器、自動運転車なども含まれる。このエコシステムの構築はまだ初期段階にあり、幅広い5G対応デバイスやアプリケーションが利用可能になるまでには時間がかかる。
スキルと教育のギャップ
5Gネットワークの導入と運用には、新たなスキルセットが必要となる。通信技術だけでなく、クラウドコンピューティング、サイバーセキュリティ、AI、IoTも理解する専門家が求められる。このスキルギャップは大きな課題であり、解消には教育や研修への投資が必要だ。
健康への潜在的影響
5Gが健康に及ぼす可能性のある影響については、現在も議論が続いている。一部の専門家は、5Gで使用される高周波の電波が人の健康に与える影響を懸念している。しかし、FDA、世界保健機関(WHO)などの保健機関は、5Gによって人々がさらされる高周波放射線のレベルは国際ガイドラインが定める上限を下回っており、健康への影響はないと見込まれるとしている。
航空運航への潜在的な干渉
航空機の高度を地上から測定する電波高度計に、5G信号が干渉する可能性も懸念されている。問題は、5Gが使用する周波数帯(3.5 GHz帯)が、4.2~4.4 GHz帯を使用する電波高度計の周波数に近いことにある。
2022年1月には、米国の複数の空港で5Gの展開が進んだため、複数の国際航空会社が米国行きの運航を一時停止せざるを得なかった。通信事業者や5G機器メーカーは干渉のリスクは低いと主張しているが、FAAは引き続き監視し、ガイドラインを発行している。
携帯端末のバッテリー消耗
5Gネットワークは高速通信と低遅延を実現する一方、消費電力が増えるという代償を伴う。そのため、5G対応デバイスでは、特に大量のデータをダウンロードしたりストリーミングしたりする際に、バッテリーの消耗が速くなる可能性がある。
ユーザーがバッテリー残量を常に気にせず5Gのメリットを享受できるよう、デバイスメーカーはバッテリー駆動時間を延ばす方法を見つける必要がある。当面、Samsungなどの企業は顧客に「バッテリー使用量を最適化」設定の利用を勧めている。
デジタル格差を悪化させるリスク
5Gは私たちの生活のさまざまな側面を一変させる可能性がある一方、デジタル格差を悪化させるリスクもある。5Gインフラ整備の高コストにより、5Gが都市部や富裕層の多い地域でしか利用できず、農村部や低所得層のコミュニティが取り残される事態になりかねない。政策立案者と通信事業者は協力し、5Gの恩恵を誰もが受けられるようにする必要がある。
5Gのメリットとは?
5Gにはさまざまな問題があるものの、その変革力は多岐にわたる。超高速なダウンロードから次世代のIoTデバイスの実現まで、5Gには多くの可能性がある。
通信速度の向上
5Gの最も注目されているメリットの一つが通信速度だ。5Gネットワークでは最大10 Gbpsのデータレートが期待され、4G LTEの最大100倍の速度になる。つまり、4Gネットワークでは数分かかるフル尺のHD映画を、5Gネットワークなら数秒でダウンロードできる可能性がある。
この速度向上は、動画ストリーミングやゲームなどデータ量の多いアプリケーションのユーザー体験を改善するだけでなく、仮想現実や拡張現実(VRとAR)などの新たな用途への道も開く。
低遅延
遅延とは、データ転送の指示を受けてから実際に転送が始まるまでの遅れを指す。5Gネットワークでは1ミリ秒以下になると見込まれており、4Gネットワークの約20~70ミリ秒と比べて大幅に短い。このほぼリアルタイムの通信は、自動運転車、遠隔手術、eスポーツなど、即時の応答が必要な用途にとって重要になる。
大容量化
5Gネットワークは4Gネットワークよりはるかに大きな容量を持つ。そのため、速度を低下させることなく、スマートフォンやタブレットからIoTデバイスやセンサーまで、より多くのデバイスを処理できる。これは、多くの人が同時にネットワークへの接続を試みる都市部や大規模イベントで特に重要になる。
効率の向上
5Gネットワークは4Gネットワークより効率的になるよう設計されている。ネットワークスライシングなどの先進技術を利用し、単一の物理的な5Gネットワーク内に複数の仮想ネットワークを構築できる。これによりネットワーク資源をより効率的に配分し、各ユーザーが必要とする水準のサービスを確実に受けられる。
新たな技術の実現
5Gの最も期待される側面は、新たな技術やアプリケーションを実現できる可能性だ。高速通信、低遅延、大容量を組み合わせることで、5GはIoT、自動運転車、スマートシティ、インダストリー4.0などの技術を実現する重要な基盤となる。5Gにより、遠隔手術や自動運転車から、次世代のスマートホームやスマート工場まで、あらゆるものが実現する可能性がある。
5Gネットワークの動向
5Gネットワークを取り巻く環境は急速に進化しており、新たなデバイス、アプリケーション、ユースケースが次々と登場している。ここでは、5Gエコシステムを形作る主な動向を紹介する。
5Gデバイスの増加
「GSA 5G-Ecosystem May 2023 Summary Report」によると、発表済みの5Gデバイス数は2023年3月から4月にかけて2.4%増加し、合計1,942台に達した。
このうち1,557台が商用提供されており、発表済みの5Gデバイス全体の80.1%を占める。商用5Gデバイス数は2022年4月末以降、51.4%という大幅な増加を記録している。
商用提供されるデバイス数は今後も着実に増加し、消費者が5Gネットワークにアクセスする際の選択肢はさらに広がると見込まれる。
ネットワークの急速な拡大
OOKLA 5G Map™は、世界各都市における5Gの展開状況を追跡している。数週間にわたる5Gの進展を観察すると、通信事業者が5Gを利用可能にするために動く猛烈なペースがよく分かる。この記事の公開時点で、5大陸には商用5Gが利用可能な拠点が約142,000カ所存在していた。

企業による導入とプライベート5Gネットワーク
Research and Marketsが発行した「5G Thematic Intelligence Report 2023」は、より柔軟なハイブリッドワーク環境において、企業が支社向けの無線接続に注目するようになると指摘している。
プライベート5Gは特に、ビル内Wi-Fiネットワークを補完するものと位置付けられている。ビル内Wi-Fiネットワークは、エッジコンピューティングとともに、AR、VR、動画分析、自律型ロボットなどのアプリケーションを可能にする。
消費者の需要と懸念
半導体企業Armによる「5G and the Future」と題した調査では、5Gの契約数が1日100万件のペースで増加している一方、5Gサービスを展開する事業者数は世界で130,000社を超えていることが明らかになった。産業・商用の顧客も、プライベート5Gネットワークで試験運用や初期の商用展開を開始している。
この調査では5Gへの強い需要が示され、回答者の半数は、2027年までに5G製品・サービスが自社の通信売上の51%~75%を占めると予測した。一方で、エネルギー消費と初期導入コストの高さへの懸念も明らかになった。
Open RANとクラウドベースのインフラ
Armの調査では、Open RANとクラウドベースのインフラが急速に普及すると予想されていることも示された。回答者の40%強は、2025年までにOpen RANが全機器出荷の半分を占めると考えている。一方、53%は2027年までに5Gインフラの51%~75%をクラウドがホストすると予測した。ただし、44%はサービス品質がクラウド化された5Gにとって最大の潜在的な障壁であり続けると回答した。
こうした動向は、5Gエコシステムのダイナミックな性質と、この技術が進化を続けるなかで待ち受ける機会と課題を浮き彫りにしている。
5Gネットワークの今後の問題点
5Gが進化し、さらに普及するにつれて、新たな課題が浮上する可能性が高い。関係者が認識しておくべき将来的な問題には、次のようなものがある。
ネットワークの混雑
5Gネットワークは前世代よりはるかに大量のデータとデバイスを処理できるよう設計されているが、接続デバイス数の急増によってネットワークが混雑する可能性は残る。その結果、特に人口密度の高い都市部で通信速度が低下し、性能が落ちるおそれがある。
サイバーセキュリティ脅威
5Gネットワークに接続されるデバイスが増えるほど、サイバーセキュリティ脅威の可能性も高まる。データ侵害、個人情報の盗難、重要インフラへの攻撃などが考えられる。業界は強固なセキュリティ対策に投資し、それを継続的に更新・改善することで、こうした脅威の先手を打つ必要がある。
規制上の課題
5Gネットワークの展開には、規制上の課題も伴う。周波数の割り当て、データプライバシー、健康と安全に関する問題などがその例だ。規制当局は、消費者を保護しネットワークの健全性を維持する必要性と、イノベーションや成長の必要性とのバランスを取らなければならない。
技術の陳腐化
技術が急速に進化し続けるなか、5Gネットワークが完全に展開される前に陳腐化するリスクもある。その場合、投資が無駄になり、さらなるアップグレードが必要になる可能性がある。
5Gで病気になる可能性はある?
5Gをめぐる特に議論の多いテーマの一つが、健康への潜在的な影響だ。5Gが免疫システムを弱めたり、さらにはウイルスを引き起こしたりする可能性があるという初期の主張は完全に否定されているが、長期的な放射線被ばくによるがんリスクを懸念する声は一部に残っている。
しかし、FDA、WHOなどの健康研究・諮問機関は、5Gによって人々がさらされる高周波放射線のレベルは国際ガイドラインが定める上限を下回っており、健康への影響はないと見込まれるとしている。
結論:企業と世界全体における5Gへの移行
通信の新時代を目前にした今、5Gネットワークへの移行は、機会と課題が複雑に絡み合う状況をもたらしている。
5Gがもたらす可能性は疑いようがない。通信速度の向上、低遅延、大容量化により、5Gはコミュニケーションの方法だけでなく、私たちの暮らし方や働き方も一変させる可能性がある。IoTや自動運転車からスマートシティ、インダストリー4.0まで、数多くの新興技術を実現する重要な基盤でもある。
しかし、5Gへの道のりに障害がないわけではない。ネットワークセキュリティ、インフラ整備のコスト、デジタル格差を悪化させるリスクへの懸念はいずれも正当なものであり、慎重な検討が必要だ。さらに、技術革新のペースが速いため、5Gネットワークの普及に伴って新たな課題が生じる可能性も高い。
組織でプライベート5Gネットワークの導入を検討しているだろうか?ビジネス向けの最適な5Gネットワークプロバイダーについては、こちらのガイドを参照してほしい。