過去1年で注目すべきキーワードを1つ挙げるなら、デジタルプラットフォーム・コンダクター(DPC)だ。
Gartnerが昨年この用語を生み出したことで、ITオーケストレーションやクラウド導入を必要とする企業は、自社のニーズにより的確に焦点を合わせられるようになった。この包括的な用語に該当するソリューションは、エンドツーエンドのプロセスをオーケストレーションし、企業インフラの概要を高いレベルで把握できる。
DPCは比較的新しい概念だ。市場の全体像をより深く理解できるよう、DPCの概要、主な機能、現在市場に出ている主要ソリューションを紹介する。
デジタルプラットフォーム・コンダクター製品とは?
デジタルプラットフォーム・コンダクター製品は、組織によるインフラの管理・整理を支援するソリューションだ。企業のITチームが直面する特に一般的な課題には、データサイロと統合の難しさがある。DPCは既存のツールやシステムを相互に統合する。これによりワークロードを管理し、さらに重要な点として、環境をまたいでインフラを標準化できる。
これらのソリューションは、機能面ではサービス・オーケストレーション/自動化プラットフォーム(SOAP)に最も近い。企業が実現できることは次のとおりだ。
- ワークフローのオーケストレーション
- イベント駆動型の自動化
- セルフサービス自動化
- スケジューリング、監視、可視化、アラート
- リソースのプロビジョニング
- データパイプラインの管理
多くのDPCとSOAPは互換性のある機能を備えているため、企業は近いうちに、これらすべてのソリューションをDPCとしてのみ市場に投入し始めると専門家は予測している。
デジタルプラットフォーム・コンダクター製品の主な機能
優れたDPC製品には、次の機能がある。
- データ収集の自動化
- ワークロードの自動化
- クラウドサービスの自動化
- データクレンジング
- 依存関係のマッピング
- ビッグデータパイプラインのオーケストレーション
- ハイブリッドクラウドでのファイル転送
主要なデジタルプラットフォーム・コンダクター製品
Stonebranch
DPC分野の老舗であるStonebranchは、企業向けに20年以上にわたるITオーケストレーションと自動化の経験を提供している。同社はSalesforce、Pentaho、Databricks、Snowflakeとの便利な統合機能を多数提供し、ジョブの自動化や運用のオーケストレーションを支援する。企業はこれらの統合機能を無料で利用できる。
同社はExpedia Group、PSCU、Weis Marketsなどの顧客と協力し、業務の自動化とプロセスの効率化を推進してきた。さらに、Stonebranchは市場におけるDPCの正当性を確立するうえで大きな役割を果たしてきた。同チームは、DPCとは何か、どう活用できるかを企業に啓発するブログ記事を執筆している。
主な機能:
- 1つのハブでワークロードを自動化できる。ITタスクの構築、スケジュール設定、管理を一元化できる。
- エンドツーエンドのプロセスを支援する自動化ジョブを一元管理できる。
- プライベート、パブリック、マルチクラウドの環境で自動化を管理できる。
- DevOpsオーケストレーションを通じて、開発者とITチームを連携させられる。
- 提供されるサードパーティーベンダーとのB2Bファイル転送を管理できる。
- IT部門のバックエンド業務向けに、企業のジョブをスケジュール設定できる。
長所:
- タスクの作成機能が充実しており、簡単に実行できる
- 顧客から、ソフトウェアが使いやすいとの評価が寄せられている
- ドラッグ&ドロップ機能でワークフローを簡単に作成できる
短所:
- 一時的なワークフロー編集の追加に手間がかかる場合がある
- 習得に時間がかかる
- ネイティブ統合の一覧をさらに増やしてほしいという顧客もいる
ReadyWorks
ReadyWorksは、DPCの導入と、そのメリットの活用を顧客に促す取り組みの最前線に立ってきた。Stonebranchと同様に、この分野について一般読者や企業に解説する記事を公開している。
企業顧客にとっての差別化要因は、データ、システム、人を運用する4モジュール方式だ。この4つのモジュールにより、企業はデータを統合・分析・計画・運用・可視化できる。同社のクラウドインフラモデルは非常に柔軟で、パブリック、マルチ、プライベート、ハイブリッドの各ソリューションから選択できる。
主な機能:
- すべてのIT記録システムからリアルタイムでデータを一元化できる。
- スプレッドシート、テキストファイル、その他の集約済みデータソースをインポートし、データを包括的に把握できる。
- レポート作成機能により、情報の分析、プログラム上の意思決定、ワークフローの開始を支援できる。
- 依存関係のマッピングは非常に柔軟だ。データセンター内のアプリケーションを確認し、インフラの全体像を把握できる。
- 監査証跡によって、ITプログラムと領収書の履歴を維持できる。購入、展開、タスク完了、エンドユーザーとのやり取りを追跡できる。
長所:
- 統合と展開を簡単に実行できる
- 顧客はコミュニケーションとレポート作成を自動化できる
- ReadyWorksのチームは非常に対応がよく、親切だ
短所:
- 高度なレポート機能はまだ開発中だという顧客もいる
- 習得に時間がかかる
- 一部のタスクや画面は、他の選択肢ほど直感的ではない
Cloudsoft
Cloudsoftは、企業のITオーケストレーションだけでなく、クラウドコストの最適化も支援する。実際、Cloudsoftが他のDPCと一線を画しているのは、データ統合と分析に対するこのパーソナライズされたアプローチだ。
企業は、Cloudsoftの6本柱のアプローチによる支援を受けられる。この6本柱は、オペレーショナルエクセレンス、パフォーマンス、信頼性、セキュリティ、コスト最適化、サステナビリティをカバーする。Cloudsoftのソリューションは金融業界に重点を置いて販売される傾向がある点には注意が必要だ。多くの金融機関が今も古いビジネスモデルに依存しているためである。同社はこのニッチ市場を重視しているものの、ソリューション自体は業界を問わず利用できる。
主な機能:
- 環境を一元化することで、データサイロを効果的に排除できる。
- インテリジェントなAI駆動型自動化により、プロビジョニング時間を短縮し、アプリケーションのライフサイクルを管理できる。
- レガシーアプリケーションを重点的に監視できる。これにより、クラウドの拡張性と、より迅速な開発サイクルを活用できる。
- オンボーディングチームが、データベースのモダナイゼーションに加え、運用やセキュリティの改善も支援する。
- Cloudsoftは、FCAおよびEU規制への準拠を証明するための設計図とポリシーを提供する。
長所:
- オンボーディング向けの補助リソースを豊富に提供している
- ドラッグ&ドロップでワークフローを作成できる
- カスタマーサービスチームの対応が非常に速い
短所:
- AWSに大きく傾倒しており、一部のユーザーには制約となる可能性がある
- Microsoft Azureユーザーは、他のツールのほうが手厚いサポートを受けられる
- 同様に、この製品はFinOpsと金融機関を対象としている
Flexera
34年以上にわたり、FlexeraはITオーケストレーションとクラウド移行の分野で業界をリードしてきた。同社は、Log4jのエクスプロイトなど、業界ニュースを常に把握していることを誇りとしている。
同社はIT資産管理と可視化を支援する。企業はFlexeraのチームに連絡し、クラウドコスト最適化についても助言を得られる。Flexeraが提供する特に便利な際立った機能の1つが、SaaSの支出と利用状況を高いレベルで把握できる機能だ。データの民主化により、企業は多数のSaaSプラットフォームを導入しているが、単純に管理しきれなくなっている。Flexeraは、この新しい時代に企業が直面する正確なROIを算出できるよう支援する。
主な機能:
- ITオーケストレーションとインサイトにより、支出、リスク、ITエコシステム全体について理解を深められる。
- 概要画面で、旧バージョンや旧製品の数など、独自のインサイトを得られる。
- オンプレミス、SaaS、クラウドなど、柔軟で多様なインフラをサポートする。
- 自動バックアップ、アレイの自動スケーリング、自動フェイルオーバーなど、自己修復機能を提供する。
長所:
- 特に企業を対象としている
- 導入企業は高水準のセキュリティを期待できる
- 顧客のタイプに応じて高度にカスタマイズできる
短所:
- ソフトウェアが時折かなり遅くなるというユーザーの報告がある
- オンボーディングは比較的高額で、基本的な導入でも1万4,000ドルかかる
- プログラムのユーザーインターフェースは、他の選択肢より扱いにくい
DPC製品の選び方
適切なDPC製品を選ぶ際のポイントは、主に3つある。
1. ニーズを評価する
適切なDPC製品を選ぶための基本的なステップは、自社のニーズを正確に評価することだ。
ほとんどの企業がDPCソリューションを導入する背景には、ITオーケストレーションの必要性と、クラウド導入における支援の必要性という2つの主な要因がある。企業の主要な意思決定者であれば、ITチームと連携し、そのニーズについても確認しよう。そうすることで、DPC導入に関して自社がどの位置にいるのかを、より深く理解できる。
2. 市場の全体像を把握する
DPCソリューションは、対象とするユーザー層やユースケースを非常に明確にしている。営業チームに問い合わせるとともに、自社の業界における企業について調査し、DPCの導入によってどのようなメリットを得ているのかを確認しよう。
上で紹介したReadyWorksやStonebranchなど、多くのソリューションは、市場やさまざまな業界におけるDPCの活用方法について、役立つコンテンツを公開している。こうしたユースケースは、これらのソリューションがもたらす具体的なメリットをより深く理解するのに役立つ。また、自社のニーズをより明確に把握するうえでも有用だ。
3. 予算を確保する
自社のニーズと、業界のリーダー企業がさまざまなDPCソリューションをどのように活用しているのかを理解したら、予算を立てて営業担当者に連絡する段階だ。
改めて言うと、DPCという概念が具現化したのはつい昨年のことだ。各プラットフォームが自社にもたらせる価値を明確に把握し、追加機能や料金パッケージについても遠慮なく問い合わせよう。こうした企業の多くは急速に成長しており、支援に意欲的だ。