チップ設計企業Armは、まだ若いものの急速に成長している5G業界で、同社のハードウェアとソフトウェアのリソースがイノベーションを推進する主な原動力となることを目指している。
同社はArm DevSummit 2021で今週、5G Solutions Labを立ち上げた。同社幹部によると、このラボではArmのテクノロジーと広範なパートナーネットワークの技術を活用し、5GおよびOpenRAN向け製品の創出とネットワークインフラの開発を加速するという。
今後数年間で世界の5G市場は急速に拡大すると見込まれている。企業やクラウドサービスプロバイダー、通信企業が、次世代のセルラー技術である5Gが4G LTEにもたらす、遅延、性能、容量に関する大幅な進歩を活用するためだ。
Armのインフラストラクチャー部門担当シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、Chris Bergey氏は、5Gネットワークが現在、世界60以上の市場で稼働しており、5G接続数は2021年末までに6億9200万件に達すると予想されていると指摘した。
「展開の急速なペースは、接続環境にほとんど、あるいはまったくアクセスできない新興国の人々を含め、誰もが5Gの恩恵を享受できるようにするには、ネットワークとエッジインフラ向けソリューションの開発を加速することがいかに重要かを浮き彫りにしている」と、Bergey氏はブログ記事で記した。「これを実現するため、通信事業者は将来のシステムにおいて、より多くの選択肢と柔軟性を求めている。Armは、広範かつ強固なパートナーエコシステムを通じて、その実現を支援できる立場にある」
Armへの幅広い支持
Armはプロセッサーを製造しているのではなく、アーキテクチャを設計し、その設計をQualcomm、Samsung、Nvidia、Apple、AMDといった大手を含む幅広いチップメーカーにライセンス供与している。Armは、大手5GシステムインテグレーターのTech Mahindraと共同で5G Solutions Labを立ち上げる。ラボは2022年初頭から開発者に提供される予定だ。
この取り組みにはすでに、Google Cloud、Nvidia、Marvell、Qualcomm、NXP、DISH、Vodafone、Mavenir、そしてモバイルネットワーク分野の業界団体であるGSMAが支持を表明している。GSMAには正会員と準会員を合わせて1,100社以上が加盟している。
「Arm 5G Solutions Labは、ソフトウェアとハードウェアの開発者、通信事業者、クラウドサービスプロバイダーが一堂に会し、KPI[重要業績評価指標]や設計図、展開ガイドを定義する場となる。これにより、5Gのイノベーションを実現し、最終的にはより迅速に収益を生み出せる」とBergey氏は記した。「Armアーキテクチャが本来備える性能、電力効率、コスト面のメリットを活用した5Gネットワークインフラを開発・展開するための触媒として、LabをArmエコシステムに提供することを目指している」
IoTが未来を担う
Armの高い電力効率を誇るアーキテクチャは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器を動かすチップの大半の基盤となっている。同社はこの10年間、データセンターや急成長するモノのインターネット(IoT)分野など、新たな領域へと事業を広げてきた。
「基本的にArmは、IoTが今後10年間、同社を支える存在になると見ている」と、Insight 64の主席アナリスト、Nathan Brookwood氏はEnterprise Networking Planetに語った。「モバイル市場はかなり飽和している。5Gは帯域幅などを改善するためモバイルにもメリットをもたらすが、IoTは5Gから非常に大きな恩恵を受ける。特に、5Gによる遅延の改善が大きい。多くのIoTアプリケーションは遅延に敏感なため、Armベースの設計が5Gのあらゆる機能を活用できるようArmが取り組めば取り組むほど、状況は良くなる」
5Gがもたらす4Gからの主な改善点は、4Gの最大100倍に達する通信速度などだ。容量も大幅に向上するため、同じネットワーク上で稼働できるデバイスが増える。遅延も改善され、約1ミリ秒となる。これは4Gより約30~50倍優れている。遅延は自動運転車などの分野で重要だ。自動運転車は、取り込んだデータに即座に反応できなければならないためだ。
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OpenRANを加速
また、セルラーネットワーク向けのオープンなハードウェア、ソフトウェア、インターフェースの相互運用性を推進するOpen Radio Access Networks(Open RAN)にも貢献する。
「OpenRANコミュニティ内で形成されてきた驚異的な勢いを踏まえると、プライベートネットワークの展開を目指す通信事業者や企業が、複数ベンダーのプラットフォームに容易にアクセスできるようにする必要があると考えている」と、ArmのBergey氏は記した。「Labはパートナーや通信事業者に安全なアクセスを提供し、小規模セル、マクロセル、プライベート5Gネットワーク、クラウドRAN、RAN Intelligence Controller(RIC)、コアネットワークなど、さまざまな重要ユースケースにわたってソリューションを検証し、新技術への信頼を高められるようにする」
IoTが進化する中、5Gの4Gに対する優位性とOpenRANの成長が鍵を握る。ArmはArm DevSummitで、同社のハードウェアとソフトウェアをIoTの基盤技術にする取り組みを強化した。チップ設計企業であるArmは、IoT向けArm Total Solutionsを発表した。これは、Virtual Hardware Targetソリューションを通じてクラウド上で仮想化されたシリコンにアクセスできるほか、Cortex-AやCortex-M設計などのCorstone製品、拡大を続けるパートナーエコシステムも利用できるアプローチにより、アプリケーションと製品の開発期間を短縮する取り組みだ。
目標は、IoT製品とソフトウェアの設計サイクルを5年から3年以下に短縮することだ。
ArmとIoT
Insight 64のBrookwood氏は、ArmがIoTに適した立場にあると述べた。
「5Gを手がけるほぼすべての企業を見れば、Armベースのプラットフォームを採用している。例えばQualcommは5Gのリーダー企業の1社だ。同社のプロセッサーはすべてArmを基盤としている。独自のハードウェア設計を採用する場合もあれば、Arm Cortexを設計の基盤として使う場合もあるが、Qualcommの取り組みはすべてArmアーキテクチャに関連している。他の競合企業、MediaTekなどについても同じことが言える。どの企業もArmを採用しているため、Armは、10年前にIntelが試みたようにこの市場へ新規参入する必要はない。Armはすでにこの市場に存在している」
同アナリストはまた、1,000社を超えるテクノロジーパートナーを含むArmのエコシステムが、IntelやオープンなRISC-Vアーキテクチャの開発者に対する優位性をもたらしていると述べた。
「Armのエコシステムは多くの点で、x86のエコシステムが最盛期にあったころよりも幅広い。Armは非常に多くの市場セグメントに影響を及ぼしているからだ。一方、x86はPCとサーバーで大きな成功を収めたことは明らかだが、PCやサーバーと周辺的な関係にある分野を除けば、他の市場では確固たる地位を築けなかった」とBrookwood氏は述べた。「かつて使われていたMIPSなどのアーキテクチャは、姿を消してしまった。何年も成果を上げていないため、Armが実際に直面している脅威はRISC-Vのような新規参入者だけだ。RISC-Vはエコシステムの構築に全力で取り組んでいるが、RISC-V企業全体を合わせても、Armと現在のパートナーが持つリソースには及ばない」
Armの開発者向けイベントで同社幹部は、パートナー企業がIoTなどの市場を対象とするCortex-M Seriesのチップ設計に基づくデバイスを700億台以上出荷していると説明した。今週のブログ記事で、ArmのCEOであるSimon Segars氏は、Armのパートナー企業が過去30年間に合計2,000億個のArmベースチップを出荷したと述べた。